中国人観光客と日本、新千歳空港
中国に行ったので、特集とかやろうかなとか思うんですが、とりあえずこれやります。新千歳空港の一件。
詳しい経緯は西本さんという方がとても詳しくまとめてくださっています。
これをさらに中国人観光客の側からまとめると、
1.出国する
2.飛行機止まる
3.待たされる&次の便の人が乗っていく
4.中国側に冷淡な対応をされる
5.日本側に威圧的な対応をされる
という感じです。実はこれは中国で起こっていることが日本に舞台を移した、しかし日本との行動様式が違うので問題化された、ということだと思います。
とりあえず順番にポイントを説明しましょうね。
1.出国する。出国した後は、本当に飛行機に乗るだけなので、待合の椅子と免税店くらいしかありません。
2.飛行機止まる。12/22、13:50発北京行きの便は夜まで遅延し欠航。航空会社は翌朝8時のチェックイン再開を決定、発表。
3.翌朝8時になってチェックインをしても搭乗案内なし。一方中国の他の地域行き(上海など)は順調に出立。午後になっても音沙汰なし。
4.16時ごろ、中国人男性が航空会社の日本人スタッフに事情確認。もし今晩も一泊する必要があれば、航空会社負担によるホテルの手配を要求。18時ごろ、航空会社の中国人責任者がやって来るが、十分な対応なし。札幌における中国総領事館に連絡しても冷淡な対応。
5.22時欠航決定。中国人責任者は制限区域から出て、再入国手続きをして空港内で待つよう乗客たちに通達。みんな出ず(新規入国扱いになるので、手続きが長くなる。人数も多い)。24日深夜2時、日本人の責任者が全員を制限区域から出そうとする。航空会社の日本人スタッフに対し、「(日本人なのに)どっちの立場なのだ」と。
6.24日早朝4時、全員が制限区域から退去。その2時間後、6時からチェックイン。
この記事によると、「暴れた」のは23日の21時ごろでした。暴れたといっても、実態は言い争いに近いものです。ここが誇張されて報道されているんですね。それもこのような背景があるのは十分に情状酌量の余地があります。そしてここで大事なのは、第一には中国側の対応が悪かったこと、第二には日本側の対応が悪かったこと。
まず第一の事柄について。
中国で公務員側の対応が悪いことは、ある種デフォルトです。中国の空港(というか、役所でしょうか)は、客が並んでいても時間になるまで決して業務を初めません。そもそも空港や役所、警察で仕事ができる人は、権力の側に立っている人です。中国での階層の分断は、金銭によるものというより、共産党に由来する権力によるものです。
空港で入国審査をしている人は、20歳過ぎくらいの若い女の人でも少尉だったりします(階級章からわかります)。そういう人は親が軍人や共産党高官で、自分も軍事学校出身とかです。彼らは逮捕権もありますし、下々の者とは違うので、なんというか本当に目が怖いです。話がそれました。
軍人が入国審査というのはイメージが湧きにくいかもしれませんが、中国ではそれだけ、権力者の子供が簡単に職に就けてずっと食っていけるシステムになっていると理解していただけると。
総領事館の対応もそのようになるのは想像に難くありません、というよりそうなりました。これは中国のシステムの害です。
航空会社は…どうでしょう? チェックインも客が並んでても時間になるまでのんびりおしゃべりしながら準備してるし、今のバブルバブルな中国はお金がもらえればいいやという考えがはびこっているので、カネにならない乗客は邪魔に映ったかもしれませんね? ましてそのために手当や補償をするなんて。
第二の事柄について。
おそらく日本側はそのような事柄は航空会社が扱うもので自分たちは関係ないと思ったのでしょう。それ以外にもあるとは思いますが。
日本だとそのへんの役割分担のシステムがかなりしっかりしていますね。日本の航空会社だと、悪天候時にも保証がありそうな気がします…が、このへんの資料が見当たらないので、確定的には言えません。資料が欲しいです。
それ以外、というのは実際、保安官たちは威圧的な物言いをしていたようです。制限区域を出ると寝る場所がないのは「自業自得」であると。この言葉は航空会社が扱うべきだという思いからだけでは出てこないでしょう。だいたい「どっちの立場なのだ」ってなんですか。航空会社のスタッフなんだからそりゃあ乗客守るに決まってるでしょ。
すみません熱くなってしまいました。まあ、そうですね、保安官たちがそういう補償は航空会社がやるもので、自分たちは自分たちの仕事をすればよい、というのは日本における事実でしょうね。
というわけで、新千歳空港では、日本でのやり方と、中国でのやり方が混在していて、そこで埋められないところがあったわけです。
とりあえずここでは、マナー問題というのは、ツーリストがゲスト側に自分たちの規範を持ち込んでしまうことをいいましょう。大体実感にあっていると思います。
そうするとこの騒動は、広義のマナー問題です。確かに日本人の客であれば暴れることはなかったでしょう。しかし彼らが暴れたことに対し上述のように十分同情の余地があること、同時に中国における「普通の」振る舞いでもあること、どちらも事実です。
という風に考えると、中国の様式が日本に持ち込まれたものということができます。これが仮に中国で起こったものであればこんなに騒動にはならなかったでしょう。舞台が日本だったから、際立って報道されただけです。
しかしそこで埋められない部分があった、というのが一番の問題だと思います。もし中国が十分に対応していれば、もし日本が十分に対応していれば。
そもそも日本が外国人観光客を受け入れる十分な数的キャパシティがないのですが(これもいつかお話できればと思います)、それが噴き出したのだと解釈しています。
興味をお持ちなら、ぜひ西本さんの方をお読みください。
トランプの勝利が意味するもの
NHK11でこんなシーンがありました。
トランプ氏の勝利に対して、制服姿の小学生が四人街角のテレビの前に立っている。左端の女子が、「なんでトランプなの!? 絶対なっちゃいけないのに!」と地団駄を踏む。
いや、あのね。全く問題ありませんよ。
彼は正しい手段でその地位を勝ち取ったんです。それが倫理的にどうかは別の問題です。これが民主主義です。
そもそもトランプの支持者層は白人の低所得者層でした。移民は成功している(そもそも移民できるような人だったら大方は)のになぜ俺たちは! ヒエラルキーをピラミッドに例えれば中間、真ん中から下が支持者層になるわけです。単純に考えても四倍になりますね? それをどのツラ下げて予想外だったとか言うんですか。それに備えるのが仕事じゃないんですか。政府もクリントン全面支援でリスクヘッジがなっていません。今頃大慌てでしょうね。
対してクリントンはエリート層の支援を得ています。NBCの選手やビヨンセと一緒にキャンペーンしてましたね。トランプほど単体での求心力がないからですよ。
彼女を選ぶことはトランプを選ぶことに対して「無難」というか、ある意味「予想通り」です。しかしそれがいい人と、それではいけない人がいる。
アメリカのリベラル系新聞がこぞって予想外を報道したのは、リベラル系新聞(記者)の層に理由があります。リベラルはエリート層です。エリート層はシステムに適合した、ある意味でシステムに守られた人々です。システムに守られない人々、一生懸命システムの中に入ろうとする人、そんな人たちの方がずっと多いんです。日本だってそうでしょ。
冒頭の話に戻りますが、「絶対なっちゃいけない」人がなぜ「なっ」たのか。まずそこから考えるべきです。そもそも「なっちゃいけない」と「なる」には質的に乖離がある。そこにあるのは理想と現実の相克であり、それに飽き飽きした人がトランプに救いを求めるのです。クリントンはエリート層なので、よいことを体現していたとしても、それは理想だから、心には届かないんです。理想は一足飛びには実現しないから。それをゆっくり埋めて行くしかない、そしてその長い道のりに耐えられるのは、状況のいい人だけです。その間にも格差は拡大する。
トランプの勝利は人間性の敗北です。現代は人間性を培いはしなかった。人間の心は人間自身を食い破ってしまった。
そういえばポリビオスの政体循環史観は、民主主義の次を衆愚政としていましたねえ。
ふじょしアートは日の目を見るか
そろそろなんか書けってはてなに言われてびっくりしました。
せっかくなので書きます。
友人がpixivにハマりまして。
すごいですねpixivは。私もよく見ますよ!
変なところ見るよりずっと当たりがおおくて、本当に何時間でも消費できて現実逃避がはかどります。時間泥棒こわい。
で、ですよ。
その人が言うには、女性向ランキングと男性向ランキングで顕著な差があるとかなんとかで、
男性向はハイレベルなものもあるが、女性向はそうではないという。
順を追って説明しましょう。
今現在、あそこでは(というか、どこでも)おそ/松/さんが大ブームです。女性向はほとんどそれで埋まっている。腐要素を含むことも多いですね。
それを男性向のイラストと比較した場合、表情や骨格や描き込みにおいて、なんとなく見劣りすると。
キャラクター当人ではなく、キャラクターの関係性そのものを、ただ消費しているだけなんじゃないか。
(一つ擁護するなら、そもそもあの絵柄はデフォルメされてるので描き込みに向かないですが)
で、その趣向の差はいったいどこから出てきているのかと。
私としてはあれは単に娯楽だからだと思っているのですが(例えば、男性が女性を消費することと、女性が男性を消費することに差があるだろうか?)
むしろその人はその消費形態が「単なる娯楽に堕ちてしまったこと」に問題を見出している。
創作物が「養分のない」単なる快感のためだけのものに陥ったときどうなるか。
(ジャンクフードみたいですね)
私自身は、男性向(のエロ。ここでは同人誌などに限ります)は市場として確立されているし、男性も女性も参入しているけれど
女性向は女性だけで成り立っている傾向が強いんじゃないかと思うわけです。
男性向は高度なものが成立しうる裾野があるけれど、女性向にはそれがない。やっと動画が対応しだしたくらい。同質的でいると幻想は膨らむもの。ここにこんな人はいないはず、こうあってほしい、…。一つの排除の形に結実する。
ジャンクフードそのものが問題であるわけじゃありません。
資本主義の世界ですから、快楽を追求するのもむべなるかな。
しかし、それ一色で染まってしまったら、どうなるでしょう。
実は男性と女性の階級の差が関係してたりして、と思います。
一般に男性の方がいい教育を受けている、とか。男女共同参画といっても、まだまだ根強いですからね。
(やっぱりちょっとバカな子の方が可愛い、とか。賢いブスと、可愛いおバカ、どっちがいい? アンケートでどう答えるかというのと、実際にどうするかはまた別の問題ですよ)
男子を教育することは個人を教育することだが、女子を教育することは世界を教育することだという言葉があります。教育された母親は、その子供の死亡率を下げるそうです。
その母親が消費だけの主体になってしまったら。そこだけで満足してしまったら。
それこそ国力の衰退に繋がりうるかもしれません。
彼女らにもいろんなタイプがいるとは思いますし、みんながみんなそうだとも思いません。そこは気をつけるべきところですね。
少し話が飛んでしまいますが、
インターネットは当該領域から排除しようとする動きすら、その領域から染み出して出てこさせてしまう。仲間内のはずがそうでは済まなくなる動きもあります。届いちゃうからね。自分のやっていることに意識的でいるというのは、なかなか難しいものです。
領海を「侵犯」? 領海を「航行」?
中国の領海への立ち入りが問題となっていますが、あれを法学の立場から反論するのは難しいかもしれない。
まず日本政府の主張から。
これはね。ミスリーディングだよ。
(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160615-00000123-mai-pol.view-000)
これを見ると確かに領海侵犯になる。
ここで中国の主張を見てみよう。
「国際的航行に使われる海峡で、国連海洋法条約の航行の自由の原則に合致する」
ここで食い違っているポイントは、ここが領海になるのか、国際海峡になるのかという部分。
では国際海峡の定義を参照しよう。
国際海峡(こくさいかいきょう)とは、国連海洋法条約によって定義された国際航行を定められた範囲で自由に行える海峡のことである。(wikipedia)
これだけだとわかりにくいですね。こうです。
(http://www.geocities.co.jp/WallStreet/7009/mg000824.htmより引用)
あくまで一般法にはなりますが、この場合は国際海峡になるんじゃないでしょうか。理屈としてはね。国際海峡と領海なら国際海峡が優先になると思う。国際通商上の理由で国際海峡が設定されるなら…。
ついでになぜ情報収集船かというと、当日日米印の合同軍事演習があったと香港のメディアが報道していました。この辺はあんまり情報出てこないな。フランス語でもだめ。
あ、でも検索したら沖縄タイムズにはちゃんと書いてあった。地元紙だけか…(https://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=173517)
でも検索したら出てくるんだねってことは知らないと知らないのね。
Youtubeのコメント欄では、領海侵犯と書かなかった毎日と朝日が反日だと言われていました。この国に真ん中はないのか。
こんなんだから自由報道ランキングが下位だのなんだのと言われるんでは…。
図書館と情報格差