いつか見た船

迷える子羊とその日記

中国③ 身勝手(と生まれながらの身分)編

中国編続きです。

 

資本主義の極地としての拝金主義。未成熟としての未分化。それでいながら、みな自分だけが良ければよい、と勝手な行動をする。未分化であるから、自分の「身勝手」は子どもや家族に波及し、そしてしかも、彼らを傷つけるのです。

 

しかしこれだけではおそらく中国の抱える問題を明らかにするのに十分ではないでしょう。

国内の状況がそこまで固定化されているのは、「出身で全てが決まる」からでもあります。そしてこれが原因であり、結果でもあります。

 

御存知の通り、中国は急成長を遂げました。今や都市部は日本と変わらない町並みです。では取り残された農村部の人はどうなるのかというと、出稼ぎに行くわけです。

出稼ぐには何が必要か……これは中国における婚活で、最も価値を持っているものはなんでしょうか、という問でもあります。

 

戸籍です。

 

もちろん暫定許可証みたいなものはありますが、あくまでそれは暫定です。

ずっと仕事をしていられる保障なんてありません。再開発の都合でいきなり家がぶっ壊されたりもするくらいですから。

北京の戸籍は、農村部の人は喉から手が出るほど欲しくて、でも絶対に手に入らないものです。

なぜなら北京の人は北京の人と結婚し、家を築いていくから。

 

日本におけるお見合いのケースだと、資産家の娘と平民の息子が結婚して家業を盛り立て……というのも少なからずあったようですが、中国では逆に作用しています。

 

 

中国の社会問題なんて山ほどあります。むしろ、これだけの問題をあげつらって改めて思いますが、こんな状態であんな経済成長を成し遂げたのは驚異的です(これは余談ですが、中国にGDPを追い越されたあたりから日本のGDPの報道はまっっっっったくなくなりましたね)。言論統制云々もありますし、良い人材ほど中国に戻ってきません。

 

これほどの問題にもかかわらない経済成長は中国の国土の広さ、人口の多さに由来するものです。今現在、中国で暮らしが良くなっているのは都市部の方です。中間層が増えているんですね。それも3億人程度。中国の人口が13.7億人ですから、せいぜい22%。日本の人口は約1.27億。3億は236%にあたります。

これだけ差があれば、負けることの方が当たり前ですし、あれだけの成長を記録しても不思議ではありません。そして、中国国内の状況は、人材流出のため悪化することになります。

 

中国の成長はいつか頭打ちになります(もうなりかかっています)。経済だけ発達してもいけないのです。昭和の時代を行きてきた方なら、当時の日本がどれほどひどかったか覚えておいででしょう。散乱したゴミ、撒き散らされる公害、経済成長と、それについていかないシステム。でも日本は変化したのです。

 

 

身勝手、もうひとつ挙げることが出来ます。とても大きな問題だと私がみなしているのは、「親」です。

親にとって子どもは、その望みを叶えるための道具です。

日本のジェンダーセクシャリティよりジェンダーベース(つまり、社会的に構築されている)ですが、中国におけるジェンダーとはそのままセクシャリティのことです。女性の価値は子どもが産めること。また、親が手放そうとしないことも大変多い。メンツのために。立派な子どもがいることは親の自慢です。では、どの点において子どもは「立派」とされるか? 

成績が良くて、優秀な共産党員で、それでもそもそも戸籍が北京でなければ、国内で戦い勝ち上がることはできません。

 

全てはメンツなのです。公的機関は何も保証できない、信用できないから。ならば、自分の感覚と、信用できる人々を信じるしかない……しかし彼らも教育を受けていない。おばあちゃんが飛行機エンジンに小銭を投げ込んだことがありましたよね? あれはそれの象徴です。

それで下の方で澱み、凝り固まったままなのです。誰もが誰もの足を掴んで引きずり下ろしている。それに気付くような人々が国外に流出して勉強したりするわけです。

 

 

もちろんそれに気付くまでもなく、(中国式でない)教育を受けている人もいます。そのような中国系アメリカ人を眩しく見つめることだってあるでしょう。

日本でだって、そんな人々が少数であるように、それは中国においても同様のことなのです。