いつか見た船

迷える子羊とその日記

車に見る文化ーディーラーとトヨタ

 

 

今回は車いってみましょう(中国編は詰まっているので、気分転換に)。

 

 

なぜ車なのかということですが、車は近代技術の結晶であり、また資本主義の大量生産の特徴でもあるからです。 ポストモダンとして情報技術とそれに基づくカスタム(管理)された生産が語られるのであれば、モダンの象徴は車とフォードと大量生産です。

 

ポストモダンだのポストトゥルースだのいろいろ言われてはいますが、まだ車が消えたわけではありません。現在日本の指導者層にある(しかも20代より数が多い)50代の方々にとって、車というのは青春の残り香であり、そして、現在もその「友」の位置にあるものです。

 

日本を代表する産業は未だに車です。ロボティクスとAIはまだまだですね。バブル期と被った産業が車だったので、これはしょうがありません(?)。バブル期にはその時代の先端産業が発達することになると思います(ex.中国の人工知能:テンセント、バイドゥ、…)。

 

 

さあ、では、トヨタを例に取りましょう。一番の人気メーカー。おそらくそれが一番早い。

 

最近販売店に行ってきてみました。新型プリウス、PHVが見たかったのです。ディーラーがその車をどのように語るのか、それは車やメーカーの姿勢、ビジョンと直結するんです。 営業時間より早く入ったら朝礼中で見向きもされませんでした。これはまあいいでしょう。 問題は試乗のとき、なのです(今回はプリウスではなくヨーロッパ部門デザインのCHRでした)。CHRも、トヨタは全部そうですが、一番の強みは燃費なわけで、微妙に硬いシート、微妙に変なサスペンション、出力の悪さ、あたりは全部そのままです(前席のスプリングはどのメーカーも良いものを使うので、後席に使うかどうかでメーカーの姿勢がわかります…トヨタはこれは最近の搭載)。

 

翻って三菱、これはCMでの言葉ですが、「技術で人を幸せにする」です。このコンセプトは日本人には馴染みがあることと思いますが、さあ果たして、私たちは本当に幸せになったでしょうか? クラウドでいつでも仕事ができるようになった、インターネットの普及でいつでも仕事相手と連絡が取れるようになった…ここで、仕事とプライベートの区別は崩壊しているのでは?  

統計学の手法、解析方法と同じで、方法論だけではだめなんです。ただ闇雲に使ってもだめなんです。クロネコヤマトは、従業員の負担を受けてAI搭載の機器を導入しようとしていますが、その結果持ち歩く機器が増えてしまい、さらなる負担増に繋がりそうな見込みです。主客転倒。  

 

では主客転倒していない車メーカーはどこか。スバルです。

アイサイト・ツーリングアシストの触れ込みは「疲れを減らし、愉しさを深める新機能」です。長距離ドライブでも楽なように、そして安全なようにーーつまり、人間中心に設計されていると感じます。

 

 

トヨタに話を戻しましょう。PHV。 時系列は前後しますが、お台場のトヨタミュージアムでも一際広いエリアで宣伝されていました(あえて「展示」ではなく、「宣伝」といいます)。

 

「ライドワンにて”ハイブリッドの次”を体験してください」

 

「群を抜く加速感。しかも静かなまま」

 

「骨から変えて作り上げた、アスリート体型」

 

スマホを経由して、車と会話ができる」

 

「ライドワンにてプリウスPHV試乗実施中」

 

「乗っても降りても、そばにいます」

 

「使い勝手は、まるでタブレットです」

 

「世界初! ソーラー充電!」

 

「EVモードで、日々の移動をほぼまかなえます」

 

 

……どうでしょうか。 あ、いや、おかしいところがあるとかじゃありませんよ。

ただ、技術に対する比重がとても大きいと感じませんか?

 

それもそのはず、トヨタのモットーで、「快適さ」に関する言葉は一つもないんです。

うーん、「静か」くらいですか? 試乗はとりあえずいいや。

 

中でも私は「使い勝手はまるでタブレット」の一文に注目します。「使い勝手」! 「タブレット」! つまりあくまで車は移動の道具でしかない。ここに「空間」という要素はない。日本の道路状況として外側の大きさが限られるのは仕方ありませんが、そもそも狭いし。実際、新しい開発コンセプトに「乗って快適」はありません(Fun to Driveはありますが、これはあくまで運転者側の目線)。

ここから、技術信仰の仮説が導けます。

 

最近トヨタはTeslaとの協定を破棄し、独自路線を行くことになりました。テスラはどんな車を作っているかというと、オート運転支援システムや、超高性能なエアフィルター、2.7秒で時速100キロに到達……つまりそういう技術の方向です。 おそらくそこで決裂したのでしょう。

 

なんというか、トヨタは日本の技術のリーディングカンパニーな感じですね。技術が先にあって、車にどう応用できるか考える、というか(ex.Mirai)。同じくテクノロジーを売りにしているAudiは、もっと空間との融合に気を遣っている印象です。日本メーカーでは、最もビジョンがある技術運用をしているのは前述のスバルです。これは信仰ではありません。

 

ついでに言っておくと、ヨーロッパのクラッシュテスト見ると、運転席側はしっかりしていますが助手席側は壊滅的な結果になっています。長らく運転席側だけだったのですが、近年助手席側テストが追加されたようです。 まあ、こういうテストは対衝性と燃費がトレードオフに近い関係にあるので、燃費(=軽さ)を売りにする日本車は不利な感じはします。

 

 

次はCM解析とかやってみたいですね。