いつか見た船

迷える子羊とその日記

中国② 未分化編

中国編その二:未分化。その一もお読みいただければ嬉しいですが、読まなくても大丈夫です。内容自体は一応独立しています。

 

 

未分化。何が未分化なのか。正直コレはいろいろ解釈できる話で、前回メンツが大事だとお話しましたが、ここにもかなり関わってくる話です。子どもの学校の名前で親にハクをつける。無理に車を買ってハクをつける。苦しむのが自分だけではないということがポイントです。

 

これを語るにはまず、中国の国家体制について言及する必要があります。皆さんご存知社会主義……と、資本主義の融合。とはいえ社会の基本原理はあくまで社会主義です。

 

では、社会主義と未分化がどう関連するのか?

そうですね、まず私有の概念がないということからです。プライバシーはありません。親に対する子どもに人権はない。国家に対する人民に人権はない。教師に対する生徒に人権はない。

 

親・教師と子どもの関係はわりと似ています。はっきりした上下関係と管理が要点ですね。とにかく勉強。本も読んじゃダメ。とか。

これは私有の概念がない=分化していないということから来ています。子どもは親の所有物である。そしておそらく教師の所有物でもある。中国の生徒は、教師が個室で朝ごはんを食べているのに彼らは食堂で食事を取らなければならない。職員室は立派なのに、自分たちの教室はそうではない(教師は公務員です。公務員は共産党当局に直結します)。というところから上下関係を教え込まれます。人民は国家の所有物である。当然国にも同じような態度で接するようになります。

国も最低限の保障はします、が、病院作ったから使ってね、で終わりです。待機時間の問題、有力者との問題、全部放置です。医療費は(取れるところから取りたいので)超高額です……なのでみんな予防に精を出し、外で運動をしますが、外はああいう状況なので多分喉が死ぬほうが早いです。

 

ちょっと話がそれました。未分化、他の問題もあります。仕事とプライベートが分かれていないことです。

 

私達日本人にとって、仕事はちゃんとやることが当たり前です。でも彼らにとってはそうじゃありません。

モチベーションがない? 彼らがいい加減だから? なるほど、それも一理あります。

では、私たちは「いい加減でないこと」をどこで習うのでしょうか?

 

学校ですよ。教育です。まあ日本の教育システムもいろいろ言われてはいますし、それのほとんどは事実なのですが、しかし日本がその恩恵を受けているのも事実です。状況は昭和より確実によくなっています。電車にゴミが散乱するようなことは減りました。平成生まれにはそのような状況は俄には信じがたいことです。

 

翻って中国はどうでしょうか。中国の教育は「勉強しろ」です。本を読むのもダメ。朝7時から補習、夜8時までまた補習。これだけ集中していればそりゃあ余計なこと考えずに済みます。当局にとっても都合が良い。国際社会に国民が優秀だっていう証拠を見せることもできます。

 

そして前回お話した超拝金主義。メンツ。働けば働くほどお金が入るならどうか、と論理的には導けますが、彼の国の階級は完全に固定されています。今経済状況がよくなっているのは13億のうちの3億くらいです。さらにこの一握りが当局と繋がっています。残りは中産階級。その中産階級も搾り取られています。中国でAudiはいくらかご存知ですか? 大体日本円の二倍です。ここに元の通貨価値を考え合わせるともっと高くなります。でも日本よりずっと売れています。三十六万台でしたっけ?

 

地方のモデル的住民として農民を想定できますが、農民は働けば働くほどお金が入る職業ではないし、農産物はあの国はとても安いです。都会で売ろうと思っても、そういうブースを出店できるような市場があるのですが、その出店料は売上の一年分に匹敵するくらい高いです。

 

 

 

社会学には「内破」という用語がありますが、これは一つ一つの分野が発展してから合流するから意味があるのであって、一つ一つの分野が未分化であればそれはただのChaosです。もちろん混沌には混沌の秩序があるのですが。しかも中国の場合、当局がそれを(崩されないという意味で、完璧に近い形で)作っているというのが特殊なところ。あまりにも徹底的な階級分化。

 

新幹線にはVIP席がありますが、お茶からクッキー(まだ中国で西洋菓子は珍しい)からジュースからおしぼりから何から何まで出てきて、毛布お願いしますって言ったらにこにこしながらかけてくれますよ。車両の一番後ろにあって、車両一台まるごとがそうなっています。一般人たちの姿を見ずに済みます(車両と車両がドアで分かれていなくて直結しているのが不思議なくらいです)!

 

このような事情で、中国では人が傷つけられるのはアタリマエのことなのです。